愛媛県歴史文化博物館 学芸員ブログ『研究室から』
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2012.10.26 Friday,
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今治市相の谷1号墳の出土遺物(1)40年前の発掘調査
 今治市湊町に所在する相の谷1号墳は、全長約80mの県内最大規模の前方後円墳です。この度、博物館では資料目録第16集として、『今治市相の谷1号墳出土遺物』を作成しました。この目録は、約40年前に発掘調査されたこの古墳の出土遺物を再調査し、報告したものです。数回に亘って、この目録に収録した資料と新しくわかった成果を紹介したいと思います。

調査当時の相の谷1号墳
調査当時の相の谷1号墳(西北方より)/正岡睦夫氏提供

古墳の発見と発掘調査
 1965年9月、東予新産業都市地域の埋蔵文化財包蔵地の調査を担当していた故松岡文一氏(当時愛媛大学工学部教授・県文化財専門委員)が宅地造成中に発見されました。その時に、県下最大の規模をもつ前方後円墳であること、破壊寸前にあることが報告されました。その結果、工事は一時中止され、緊急学術調査として発掘調査が実施されることになりました。

第1次調査(1966年3月5日〜25日)
 調査前の状況としては、測量の結果、全長82m、前方部幅40m、後円部径50.28mの前方後円墳で、墳丘は二段築成で、全体にわたり葺石がめぐり、その間に多くの埴輪片が残存していることがわかりました。この時の調査では、後円部を中心に墳丘と主体部が調査されています。
 「発掘日誌」によると、墳丘に5箇所のトレンチを設定し、それぞれを掘削し、葺石、根石を検出するとともに、墳丘西側で括れ部の検出が行われています。また、後円部では主体部の確認及び内部の掘り下げが行われています。
 内部主体である竪穴式石槨は、全長7.1mの長大なものであることが確認されています。しかし、天井の蓋石はなく、側壁も6〜7割は崩されて板石を失い、その高さは正確には分らない状況でした。
 副葬品はほとんどのものが副葬された位置から移動した状態で確認され、次の資料が出土しました。
 禽獣画象鏡1面・鉄剣・鉄刀・刀子・鉄斧・やりがんな・その他の鉄器片
 また、墳丘では、円筒埴輪・朝顔形埴輪の他、中世の土器が出土しました。

第2次調査(1967年3月5日〜4月)
 第1次調査の補足調査として、後円部の内部主体の調査と前方部及びくびれ部で葺石・根石の検出が行われました。前方部の調査は西側の墳丘を全面発掘して、葺石や平坦部の敷石、埴輪などを中心に行われました。
 内部主体の調査では掘り下げが行われ、ダ龍鏡・鉄剣・刀子・円錐形銅製品が検出されています。
 前方部の調査では、北西側の前方部に連接するくびれ部で葺石層が存続していることが確認されました。その結果、前方後円墳の周囲には二段築成の葺石列が存在することが確認されました。
 この2度に亘る発掘調査後には調査は行われておらず、墳丘には未調査の部分があり、発見・調査後、約40年を経た現在においても、検討課題があります。

(資料目録第16集『今治市相の谷1号墳』は当館友の会が増刷して販売しています。入手方法は友の会のページをご覧ください。)
2007.06.26 Tuesday,16:07
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2012.10.26 Friday,16:07
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